研究概要 |
埼玉県南部から東京都までの約30km区間の,荒川低水路内護岸前に生息したヨシに関して生息環境調査を行った.また,水位変動のヨシへの影響を調査するため,大学構内にて実験を行った. 水位変動実験の結果,荒川の土を用いて生長させたヨシでは,水位変動の有無で生長の違いは見られなかった.これは,荒川の土が細粒分を多く含み,水位低下時のストレスを低減するように働いたためと予測されるが,本研究からは詳しくは分からず,今後の課題である. ヨシの生息環境調査では,荒川のヨシ群落を32箇所設定し,その地盤高や傾斜を資料から収集した.現地では,ヨシの生息密度や草高を計測した.また,ヨシ生息地の土を持ち帰り,粒度分布,強熱減量,アンモニア態窒素濃度,溶存態至窒素濃度,リン酸態リン濃度を測定した. ヨシの生長量調査では,地盤の傾斜が比較的急な場所で,ヨシの生息密度が高くなっていることが観測された.過去の研究から,ヨシは生息環境が悪くなると密度が高くなることが報告されており,急斜面上に生息するヨシの生息環境は,多と比べて悪いことが伺える.これは,荒川を航行するタンカーなどが作り出す航走波が度々強く当たるためである. ヨシ生息地の土の分析では,荒川のヨシ生息地が,土の粒度分布や栄養状態などに関して,非常に多様な分布を示すことがわかった.また,強熱減量が高い土では,窒素やリンの濃度も高く,そのような場所では有機物が堆積している可能性も考えられた. 本研究結果を,既往の報告書により報告されている,荒川下流ヨシ群落の減衰傾向と比較したところ,減衰傾向のヨシ原では,他の場所と比較して栄養塩濃度の高い場所が多く,富栄養化が生長促進ではなく,逆に生長阻害に働いている可能性も示唆された.
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