1.中・高解像度機構シミュレーションを利用したグローバル水文シミュレーション まず、基本となる水文量を計算するためのグローバル水文モデルをセットアップした。本モデルは全世界に0.5度グリッド解像度のものであり、申請者の所属する研究グループでこの数年間開発してきたものを目的に応じた改良を続けながら用い、グローバル水文モデルに中・高解像度機構シミュレーションから得られる物理量や過去数十年間のグローバル観測気候データセットを入力し、河川流量等の水分量を算定するシステムを構築した。また、得られた水文量に対して観測地を用いた検証を行った。非常に精度のよいグローバル水文モデルというものは現在の技術・データ精度ではどうしても不可能であるが、必ずしも観測値を非常に良く再現する水文シミュレーションでなくとも、温暖化による変化を適切に抽出できれば良いという目的のため検証・キャブレーションの時点においてある程度の誤差は許容することを確認した。 2.洪水データエースとのマッチアップによる洪水評価のための物理量の決定 上記水文シミュレーションから得られる物理量の中でどの物理量の中でどの物理量が実際に被害をもたらすような過去の大洪水と対応するかについて、過去の世界の洪水を収集したデータベースと過去を対象としたモデルシミュレーションの結果を丹念に付き合わせることによって、温暖化実験から得られる物理量で洪水危険度の変化を測定できるもの(指標)を抽出した。すでに述べたとおり、指標とは単一の物理量とは限らず、大河川に関して月流量、アジアの都市に対しては日降水量の統計値変動等となるが、できる限りグローバルな算定精度の高いものである。
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