グローバル水文モデルを用いて、過去から将来にわたる地球規模での洪水の変化、その"温暖化"との関連性をbest estimateで示すことを目的とした。過去100年の土地利用の変化、観測された月別の気温と降水量、それらから半経験式を用いて算定された放射や湿度の変動などを入力として、全球陸面モデルと河川モデルでのオフライン・シミュレーションを行うことによって、20世紀100年間の世界の河川流量、土壌水分、積雪量などを世界で初めて日単位でシミュレーションし、それらから洪水・渇水の変動を取り出すことに成功した。さまざまな観測値との比較からも、算定された各々の水文量の変動、渇水・洪水といった極端な値の変動が妥当であることが示されつつある。ここでは洪水・渇水を適切に指標化することによって実現象の変動と結びつけた。成果は後述のように日本語の速報版は出版され、さらに通常の論文も複数投稿中である。この算定された過去の全世界水文変動量は、いくつかの他の応用研究にも利用された。 これらに加え、最新の"温暖化"実験の出力を用いた21世紀のアセスメントも進めた。上記では河川流量をもとにした渇水・洪水算定を行ったが、ここではまず、世界的に注目となっている夏の土壌水分の減少(旱魃化)に注目した。最新の高解像度温暖化実験の20世紀部分の結果と、上記の過去100年のオフライン・シミュレーション結果とを比較した結果、北米以外の世界の主要部分に関して増減傾向が一致した。そして、それは温暖化下の21世紀へと続く傾向であった。具体的に記せば、現在すでに南・東南アジア、ヨーロッパ、サヘルなどで夏の土壌水分は長期的な旱魃傾向を示しており、今後21世紀はそれが加速すると見込まれる。世界の社会・農業に大きな影響を与えることであろう。
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