本年度の研究では、(1)解析に用いるデータ収集および(2)影の抽出技術の開発、以上の2点を年度計画とした。まず、(1)のデータ収集に関しては、水戸市および日立市に関する高解像度衛星画像を入手した。また、今後の研究計画で必要となるGIS化された基盤情報(空間データ基盤・オルソ補正済み空中写真画像)を整備した。これらの一次情報を参照し、研究を展開してゆく過程で、衛星画像に投影された影とDSM(Digital Surface Model)より作成する影の整合性を議論する際に、「諸補正処理」および「データ作成年次と季節」に関して一貫した処理手順を辿る必要性が示唆された。このため、(2)の影抽出技術の開発に関しては、現状のDEMの地形表現限界と、日立市内局所における自作の高解像度DEMによる地形表現限界を整理し、今後のDSM作成に関する基礎研究事項を整理した。 続いて、本研究計画の重要な核となる実利用面でのアプローチに関して高精度土地利用情報抽出技術の開発に着手した。研究計画策定時には、解像度の異なる衛星画像と地理情報をフュージョンさせた方法を想定していたが、データ間の位置整合性を議輪する場合に様々な課題が累積する。このため、元来、我々の手にしている高解像度衛星画像の解像度を活かす方向に研究の視点を変換した。即ち、1(m)解像度を低解像度化させた衛星画像を2階層準備しておき、低解像度から順に分類図を作成し、分類クラスを順次細分化してゆく方法を考案し、検証した。対象領域は、ひたちなか地区と水戸市近傍を流下する那珂川堤外地で検討している。高解像度衛星画像より土地被覆分類図を作成する方法は、knowledge分類や区分されたセグメント間に規範を設定する方法等が提案されているが、その規範を設定することに非常な労力がかかるのが実情である。考案した方法は、分類方法については既存の方法(クラスタおよび最尤法)に基づくものではあるが、高解像度衛星画像の有する高解像度の特徴そのものを活かして精密な分類クラスを有する土地被覆分類図を作成できる点で、実利用の観点から寄与できる方法と考えている。この方法は本年度末に成果の集約を行ったため、学会等での成果の公表は来年度行う予定としている。
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