運転者の経路選択行動を個人行動モデルとしてミクロ交通シミュレーションに適用するためには、様々な要因で成立している経路選択メカニズムを解明し、実用可能なモデルを提案することが必要である。本研究では、(1)既存研究で提案されている個人経路選択モデルにおける「走行前予定経路決定モデル」の適用可能性を探ると共に、(2)経路選択モデル構築のための実験環境として交通シミュレーションを用いる手法の提案とその有効性確認を目的とした。 ある地域において走行経験がなく、その地域をほとんど知らない場合の運転者の経路選択モデルである「暫定予定経路決定モデル」の検証をするためにアンケート調査を行った。その結果、運転者は出発地から最短距離で幹線道路に出て、幹線道路を目的地の周辺まで走行し、幹線道路から目的地までの細街路の走行距離が最短となるような経路を選択するという、モデルで仮定された経路を通ることがわかり、暫定予定経路決定モデルの妥当性を確認することができた。 さらに、交適情報が提供された場合の運転者の経路選択行動への影響を調べる事ができるように、交通シミュレーションモデルの改良を行った。シミュレーション上を通る車の平均速度を計算することにより道路の混雑状況を既存の交通情報提供システム(例えばVICS)と同様に表示することができるようになった。このことにより交通環境を任意に再現することができるようになり、同じ交通情報が提供されたときに被験者により経路選択行動にどのような影響が考えられるかについて調査するための実験環境作りができたといえる。 対象地域を知らない場合の走行開始前の運転者の経路選択状況が、調査を行うことにより明らかになった。また、交通シミュレーションを改良することにより、情報の提供があった場合の運転者の経路選択行動の変化について同一の状況下で調査を行うことができる実験環境作りができた。
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