(1)シミュレーションを用いた自動車運転手における経路選択行動の検討 ドライビング・シミュレーター(擬似運転装置)における高度なバーチャルリアリティ技術は、高速道路におけるトンネル・サグ部における渋滞現象の解析等が実施されるに至っている。ただし、これらの研究では経路選択が発生しない非ネットワーク道路における利用が主であり、個々の車両がそれぞれ経路選択を行う道路網における研究は事例が少ない。本研究では、リアリティの高い仮想的な運転空間を創出することを重点とせずに、運転者が運転行動とカーナビゲーションによる車内での道路情報提供を擬似的に体験し、交通状況と提供情報に応じて経路をどの様に選択するかを任意に検討できるシステム構築を目指した。具体的には、車両一台一台の挙動を表現できるミクロ交通シミュレーションの計算によって交通ネットワーク上の交通状況の再現を行い、その結果を集計して擬似的にカーナビゲーションと同様の表示をするシステムを構築した。実験時は、パソコン用ディスプレーに擬似的なカーナビ画面を表示し、実験者(ドライバー)の経路選択への影響を調査した。ただし、実際の運転行動と実験システムのリアリティーに大きな差異があったことから、今後はドライビング・シミュレーター等の既存技術との融合が課題である。 (2)経路誘導による交通環境改善の検討 ITS技術の中でもドライバーに対する経路誘導システムは、交通量の物理的分散を誘導することで交通システムの最適化を目指すことができる重要なテーマである。本研究では既存のミクロ交通シミュレーションモデルに、経路誘導モデルを導入した。その上で、誘導経路の選択率を変化させたり、経路誘導タイミングやその更新間隔を任意に変更させることで、交通ネットワークとしての変化を分析し、利用率が100%になることだけがシステム全体を最適化することには直結しない点などの認識を得ることができた。
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