本研究の目的は、交通が活動の派生需要であることを強調するアクティビティアプローチの視点から、時空間制約下での交通行動分析の枠組みの中で、(1)情報通信利用により実行可能な活動について、移動中の活動にも着目して体系的に整理し、(2)詳細な個人の生活行動・情報通信利用ダイアリー調査および活動スケジューリング実験を実施し、(3)個人の活動スケジュール制約と都市空間データから情報利用による活動を含めたアクセシビリティ指標を定量化し、(4)時空間に着目した分析により、アクセシビリティと活動スケジューリングの意思決定との関係を明らかにすることである。 本年度は、情報通信機器の利用により実行可能な活動を整理し、生活行動・情報通信利用データ収集のための調査手法の検討を行った。まず、人々が日常生活で利用している情報通信手段(携帯電話、インターネット接続パソコンなど)別に、それを用いて行う活動(電子メール、Webサイト閲覧、会話、ネットショッピングなど)の実行可能性について、時刻、場所(自宅、自宅外、移動中)、同時に実行可能な活動、といった制約条件に着目して体系的に整理した。ここでは、情報通信利用形態が大きく異なると考えられる、個人属性(性、年齢、職業、居住地など)の異なる人々を対象に行うインタビュー調査の結果も反映させた。各種統計資料をレビューすることで、マクロな傾向についても把握した。次に、移動中の活動を含めた活動パターンおよび情報通信利用の実態と、活動の追加・削除・変更などの動的活動スケジュールデータ収集を行うための、紙の調査票ベースの調査を行った。また、効率的で回答者の負担の少ない調査手法および調査票設計に関する検討を行い、GPS携帯電話を用いた調査用アプリケーションを開発し、その有効性について検討した。
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