研究概要 |
平成15年度は,社会基盤整備を巡るコンフリクトに関する情報を基に,人々が認知したコンフリクトの構造に関する調査を実施した。その上で,調査回答者が認知しているコンフリクトの構造と,非協力ゲームモデルとの整合性について,統計的手段により検証を実施した。その結果,非協力ゲームモデルの基本要件である戦略的相互作用について、認知の不完全性が示された。さらに,人々がコンフリクトの構造を認知する過程について以下のような知見を得ることができた。 ・コンフリクトの当事者が,自らが取り得る行動の集合(戦略集合)を特定する際,対立の激化を導くような行動が排除される傾向が存在する。その結果,非協力ゲームモデルは相手に対して妥協的な行動を戦略として形成される。 ・人々は,全面的な対立状況は,当事者が選択する行動とは無関係に生起すると認識している可能性が高い。 また,計画コンフリクトの初期段階における主体間のゲーム形の共有過程に着目してモデル分析を行った。まずコンフリクトのグラフモデル(GMCR)に基づいて計画コンフリクトの初動モデルを構築し,汎用的行動規範と代替案集合集合の関係を明らかにした。次にさまざまなタイプの計画コンフリクトについて,主体が行動規範を戦略的に選択した場合の代替案集合の安定性について分析を行った。その結果,以下のような計画論的知見を得ることができた。 ・計画コンフリクトに対して合意形成を試みる調停者(第三者委員会や公害等調整委員会等)の立場においては,代替案集合の提示に当たり,パレート効率性のみならず,選好が低い事象に対する当事者(主体)の許容度をも考慮すべきである。 ・事業者の選好順序を社会的厚生の改善につながるように設定することが可能な状況を想定する。この場合,コンフリクトを合意形成に導くことが社会的に要請されていれば、事業者の選好順序において反対派との対話が優先事項となるよう,政策目標を設定すべきである。
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