本研究では、都市の顔となりうる河川景観について、その都市景観的な働きを分析するため、二つのアプローチをとった。一つは、河川と街区の関係分析であり、もう一つは、都市河川周辺の歩行シークエンス分析である。前者については、河川と街区の関係を立体的な断面関係として把握することにより、「移動・滞留」の活動要素の抽出と、「行く・見る」いう知覚による活動のつながりによって、河川から市街地における活動の中心部分を把握することができた。また、その活動空間を4つに分類することで、複雑な空間構成を読み取りやすくし、その並び方で都市河川の空間特性が認識できた。また、類型化を通じて、都市河川の空間特性の違いを整理するだけでなく、典型例や人の活動に着目したゾーニングなどにより、都市的な一面を見出すとともに、都市と河川の関係に配慮した空間計画に有効な考え方を提示することができた。一方、後者については、歩行者のシークエンス景観をデジタルカメラの連続写真で記録し、その画像の開放度(空間の開け具合)を測定した。その開放度の変化量に対してトレンド分析を行い、トレンド成分とゆらぎ成分を抽出し、シークエンス景観の記述方法とした。これによって、都市内での歩行体験において、河川空間が有する働きを、少なくとも定性的に記述することが可能となった。この手法は、未だ開発中であるが、非常に簡便なものであり、都市河川周辺以外にも適用可能なものである。
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