地区交通対策の事後評価に関する研究は多数見られるものの、長期供用後の評価に関する研究は数少ない。また、地区交通対策の実務においても、長期供用後のメンテナンスや追加的な対策を実施した例もあまり見られない。そこで本研究では、供用後5年が経ちコミュニティ・ゾーンが地区に馴染んだ名古屋市長根台地区を事例に、交通量・自動車走行速度・路上駐車台数等の調査、地元住民を対象としたアンケート調査を実施し、各調査で得られたデータを分析することにより供用後数年経過したコミュニティ・ゾーンの効果を再評価した。 また、地区内の交通状況が改善され地区内住民から良い評価が得られたとしても、周辺に悪影響を及ぼしたり、周辺住民に自分たちの地区が整備されていないことに対する不公平感を感じたりしているかもしれない。そこで、長根台地区周辺の交通状況と道路に対する意識、長根台地区内の道路に対する意識と評価、長根台地区内のハード的対策とソフト的対策に対する意識、周辺住民への事業の周知・説明の有無等をアンケートで尋ね、周辺住民の立場からコミュニティ・ゾーンを評価した。 以下に得られた知見を列挙する。 (1)ゾーン内の自動車交通の抑制効果は整備直後とほとんど変わっていない。 (2)交通事故件数が、事業完了3年後と5年後で事業実施前の件数に戻っており、特に自動車と自転車の事故が多い。 (3)地元住民のコミュニティ・ゾーンに対する各種評価も依然として満足傾向にある。 (4)各種物理的デバイスは地元住民から十分な評価を得ている。 (5)安全で快適な地区を維持するために、自主的な対策を講じている住民が存在する。 (6)ゾーン内住民は安全性と快適性を重視し、ゾーン周辺住民は利便性を重視している。 (7)ゾーン内住民とゾーン周辺住民でコミュニティ・ゾーンに対する不満は共通点が多い。 (8)ゾーン周辺住民はコミュニティ・ゾーンの形成によるゾーン周辺道路の悪化は無いと考えている。
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