研究概要 |
本年度は、内分泌攪乱物質(EDCs)および医薬品由来化合物(PhACs)のNF/ROろ過による除去性を検討するためのステンレス製クロスフローろ過装置の作成を行うと共に、分子量・疎水性(オクタノール・水分配係数により評価)が適当な範囲に分散し、揮発しないような11種の化合物の選定を行い,二種類のRO膜を用いて、純水をバックグラウンドに設定した基礎的除去実験を行った。膜材質の差異による除去性の違いを検討するために、ポリアミド系RO膜(XLE)および酢酸セルロースRO膜(SC-3100)を用いて実験を行った。一連のろ過試験では24時間クロスフローろ過を継続した後に定まる除去率に基づき、各膜の除去性の評価を行うと共に、化合物の物理化学的特性と除去率の間の相関に着目し、除去率を決定する支配因子について検討した。今回検討を行った二種類の膜では、SC-3100の方が脱塩率の高い膜であったが、今回検討を行ったEDCs/PhACsについては、一例外を除いてXLEの方が高い除去率を示した。この結果は、EDCs/PhACsのNF/RO膜を用いた除去を予測・比較する際に、NF/RO膜の性能表示に多用される脱塩率を用い得ないことを示すものである。NF/RO膜の分離性能を表す数値としては、脱塩率の他に分画分子量も用いられる。ポリエチレングリコールを用いて各膜の分画分子量を評価した結果、XLEは<200、SC-3100については200〜300と見積もられたが、同様の分子量レンジを持つ、EDCs/PhACsの除去率は50%を下向ることも観察された。したがって、分画分子量もEDCs/PhACsのNF/RO膜による除去の評価に直接的に用いることはできないことが示された。化合物の物理化学的特性と除去率の関係では、XLE膜については分子量(分子サイズ)と、SC-3100膜については疎水性(極性)との問に高い相関が見られた。
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