研究概要 |
衛星リモートセンシングにより閉鎖性水域の汚濁物質の解析を行うためには,対象とする水域の放射伝達モデルを構築する必要がある.そこで,まず,放射伝達モデルの評価のために,野外観測を実施した.観測は,富士五湖のうち,比較的汚濁が進んでいる山中湖および甲府近郊の千代田湖,対照として非常に清浄な本栖湖で実施した.観測項目は,1)分光放射計により、水面直上および直下,任意の深さでの上向き放射輝度および下向き放射照度,2)クロロフィルa量や懸濁物質(SS)といった水質項目,3)採水試料より,懸濁物質および溶存物質の吸収係数である.これまで水域中の懸濁した物質は,懸濁物質としてまとめて測られてきた.しかし,沿岸域に代表される閉鎖性水域は,河川からの土砂粒子の流れ込みや底泥の巻き上げ等により無機粒子が多く存在し,また,その無機粒子は,他の有機性の懸濁物質より,高い散乱性をもつことが指摘されていることから,SSを無機性と有機性とに分けて定量した. 次にこれらの観測結果を基に放射伝達モデルにより水面での反射率を算出し,観測結果から得られた反射率と比較検討を行った.放射伝達モデルとしてMorelの式を用いた.この式では,各物質の吸収係数と後方散乱係数が必要となる.吸収係数は,ガラス繊維フィルター上に懸濁物質を捕集し,積分球付分光光度計で吸収係数を測定した.後方散乱係数は,直接的に測定することは困難であるため,今回は,過去の文献で得られた式を利用した.比較した結果から,観測日時によって一致したケースとしないケースがみられた.そこでSS中に占める無機性懸濁物質の割合とモデルから算出した反射率と実測値とのずれと比較したところ,互いに相関がみられた.これは,過去の文献の後方散乱係数の式においてSSを無機性と有機性とに分離して表現していないことによるずれと考えられる.
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