研究概要 |
衛星リモートセンシングにより閉鎖性水域の汚濁物質の解析を行うためには,対象とする水域の光学モデルを構築する必要がある.そこで,本年度も引き続き,放射伝達モデルの評価のために,タイ王国のタイ湾で野外観測を実施した.観測項目は,1)分光放射計により,各深度での上向き放射輝度および下向き放射照度,2)クロロフィルa量や懸濁物質(SS)といった水質項目,3)採水試料より,懸濁物質および溶存物質の吸収係数である.沿岸域に代表される閉鎖性水域は,無機粒子が多く存在し,また.その無機粒子は,他の有機性の懸濁物質より,高い散乱性をもつことから,SSを無機性と有機性とに分けて定量した.さらに無機性懸濁物質の光学特性を推定するため,無機性懸濁物質の粒径分布,および吸収係数を測定した.試料水を灰分が少ないセルロースフィルターにろ過し,マッフル炉により500度3時間加熱し,有機物を燃焼させ取り除き,残渣物を電解液に懸濁させ,コールターカウンターで粒径分布を測定した.一方,試料水をガラス繊維フィルターにろ過し,同様にマッフル炉により500度3時間加熱し,その後,分光光度計により吸光度を測定した.吸収係数への変換は,文献を参考に行った.これらの測定結果から,Mieの散乱理論により,無機性懸濁物質の複素屈折率を推定した.さらにこの推定した複素屈折率,および実測した粒径分布から,光学モデルで必要となる後方散乱係数を算出した. 推定した無機性懸濁物質の後方散乱係数を含む,植物プランクトンや懸濁物質,有色溶存有機物の各光学特性をもとに推定した海面直下での反射スペクトルと放射計により実測した反射スペクトルとを比較した.一致不一致の程度は地点により大きく異なっていた.今度,一致しなかった地点の反射スペクトルのずれから,誤差要因を考察し,無機性懸濁物質の光学特性を含め,各光学特性の検討を行う予定である.
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