昨年度までは、一般廃棄物処理事業の実態把握と、廃棄物処理サービス需要量を予測するための各種データ・統計資料を整備することに努めた。一般廃棄物処理事業は市町村の行政区域単位で運営されるため、各市町村における環境局発刊による事業概要を収集した。筆者らの既存研究にもあるように、環境会計制度を一般廃棄物事業で導入する際には分別・収集・圧縮・破砕・焼却・リサイクル・埋め立ての各過程において通過する処理量、建設費単年度換算まで換算した処理費用、環境負荷を算定し、発生主義的会計方式を採用する事が望ましく、また各通過点の費用対効果データを整備する必要がある。これらの不足を埋めるために、現地調査・ヒアリング・見学を通じてデータベースの作成を試みた。さらに、対象となる施設の規模や技術水準の適正度合いを計るには、このデータベースを年次に渡って拡張する必要がある。すなわち、これらの過程をLCAステージで評価することであるが、本年度には対象地域が限定されるという意味で暫定的なverではあるが、一応の完成を得た。さらに本研究では得られたマテリアルフロー及び金銭的勘定項目の情報に、主に名古屋市を対象として、幾つかの政策分析を試みている。主な研究結果としては次の2つが挙げられる。(1)リサイクル対象廃棄物として、紙ごみについて指定業者搬入のデータを入手し、国内バルブ生産を起点として、新聞用紙・印刷用紙・包装用紙・衛生用紙・ダンボール・その他のカテゴリーにつき、バージン及びリサイクル財生産のカスケード利用フロー図を整備し、これらの技術条件(材質の劣化、再生費用等)を制約条件として、費用面、追加エネルギー、炭素固定率等の評価値において最適化フローを導出した。これはゼロエミッション構想の理念が産業全体としてはどこまで反映されるているかを問えるものであり、結果は産業全体の再資源化量や総製品販売額、いずれを目的変数とした場合においても現状より1.5倍近くの値が得られるパスが存在することがうかがえた。(2)名古屋市において、時系列的な環境会計上の数値の趨勢を見るに、非常事態宣言後直後に大きな変化が見られる。同時期には埋立地の確保が困難であるため、容器包装リサイクル法の推進と共に、短期集中的に一般廃棄物の再資源化を進めているが、この分別の徹底化と共に破砕や焼却などの中間処理過程における運営費用の増加が統計的に確認できる。さらに多数の市町村の処理事業実績によるクロスセクションデータを用いて、分別の徹底と中間処理運営費用構造の関係を調べたが、これも正で有意となる。また、同宣言の有無比較を見るために、処理量の慢性的な増加を担保する上で新しい施設需要があった場合を想定し、実際の費用との比較を試みたが、若干実際の値の方が高く、同事業の効率化を進める必要性が認識された。
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