ごみ溶融スラグは路盤材など粒状のまま利用される場合や、コンクリート骨材など材料として成型後に利用される場合が想定される。拡散溶出試験はこれらの利用状況に応じてスラグからの溶出成分の環境影響を評価できるが、試験に多大な時間を必要とする問題点がある。そこで本研究では拡散溶出試験の試験期間の短縮を目標として、今年度は試験における温度と撹拌強度の影響について検討を行った。試験には粒径1〜2mmのスラグとそのスラグを細骨材としたモルタルを用いた。 その結果、温度と攪拌強度の影響は、スラグとモルタルで異なる傾向にあることがわかった。スラグの場合、撹拌強度500rpmのものが150rpmまたは撹拌無しの条件よりも溶出濃度が高くなる元素が多く見られ、温度は30℃、60℃よりも5℃の条件で溶出濃度の高い場合が多い結果となった。モルタルの場合、撹拌強度による違いはほとんどみられず、温度は60℃で最も高くなる傾向が確認された。このように試料の種類によって最適条件が異なるため、溶出を促進するための最適条件を決定することは困難と思われる。このような差異が現れた要因として沈殿生成などが考えられるため、溶媒量を変更した試験を実施する必要がある。また、溶出フラックスの変化から溶出機構が拡散律速かどうかを判定する場合には、現状56日間または64日間としている試験期間を14日間程度に短縮しても十分であることが予想され、簡易判定法としての試験期間短縮は実現可能であることが示唆された。
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