九州地区で発生する焼酎粕量の約半分量の26万3千tonを占める鹿児島県では、今尚10万8千tonの焼酎粕が海洋投棄処分されている。今後、我が国もロンドン条約を批准するとみられ、焼酎メーカーにとっては大きな問題となっている。筆者等は焼酎粕を植物由来の有効な資源としてとらえ、焼酎粕から紙(エコ紙)を作製する技術を確立し、その技術を利用して土木・農業用資材の開発を検討している。本年度は、焼酎粕由来窒素を安定同位体の^<15>Nで標識し、^<15>Nトレーサー法を利用することで、土木・農業用資材の一つである焼酎粕含有エコポットの窒素収支(植物体へ吸収される窒素分、土壌中に残存する窒素分、地下水へ浸透する窒素分)を明らかにすることを目的に以下の項目について研究を行った。 1)^<15>N標識の米及び甘藷の栽培及び焼酎粕の製造 鉄骨ハウス内にコンテナ(内寸:53.7cm×41cm=0.22m^2(高さ32cm(未耕土しらす27cm))(59.4L))を4個準備し、重窒素((^<15>NH_4)_2SO_4)標識の水稲の栽培を行った。また、水稲栽培に利用した同寸法のコンテナ12個を準備し、重窒素(^<15>NH_4^<15>NO_3)標識の甘藷(コガネセンガン)の栽培も行った。栽培後、各作物のT-N含有率(%)、^<15>N(Atom%)を測定し、鹿児島県工業技術センターが保有するセミパイロットスケールの蒸留釜(100L)で焼酎を製造し、^<15>N標識焼酎粕を回収した。 2)^<15>N標識焼酎粕の窒素分析 各作物体及び焼酎粕(原液)のN含有率(%)、^<15>N(Atom%)を測定した。その結果、玄米中のN含有率は1.23%、^<15>N(Atom%)は24.3%であった。一方、甘藷のN含有率は0.406%、^<15>N(Atom%)は5.13%であった。また、米をラベリングした焼酎粕のN含有率は3.06%、^<15>N(Atom%)は3.63%であった。一方、甘藷をラベリングした焼酎粕のN含有率は3.35%、^<15>N(Atom%)は1.55%であった。 来年度は、これらの試料からエコポットを作製し、エコポット由来窒素及び焼酎粕(原液)の植物体吸収、土壌残存、溶脱及び揮発の動態を簡易ライシメーターで追跡する予定である。
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