九州地区で発生する焼酎粕量の約半分量の26万3千tonを占める鹿児島県では、今尚10万8千tonの焼酎粕が海洋投棄処分されている。今後、我が国もロンドン条約を批准するとみられ、焼酎メーカーにとっては大きな問題となっている。筆者等は焼酎粕を植物由来の有効な資源としてとらえ、焼酎粕から紙(エコ紙)を作製する技術を確立し、その技術を利用して土木・農業用資材の開発を検討している。本年度は、焼酎粕由来窒素を安定同位体の^<15>Nで標識し、^<15>Nトレーサー法を利用することで、土木・農業用資材の一つである焼酎粕含有エコポットの窒素収支(植物体へ吸収される窒素分、土壌中に残存する窒素分、地下水へ浸透する窒素分)を明らかにすることを目的に以下の項目について研究を行った。 1)^<15>N標識エコポットを用いたコマツナの生育試験 ^<15>Nトレーサー実験において、エコポット由来窒素の動態を解析した結果、エコポットに含まれる窒素成分のうち、地上部、地下部へ吸収されたものの割合はそれぞれ14.6%、1.9%であった。また、エコポット由来窒素の約半分(55.6%)は土壌中に残存していた。したがって、エコポット中の窒素成分の約70%は約1ヶ月間の栽培期間中に紙から溶出することがわかった。 コマツナの栽培開始時と終了時における土壌中のEC、無機態窒素量を比較すると大きな差は見られなかった。しかし、エコポット由来窒素の55.6%は土壌中に残存していることから、土壌中のエコポット由来の窒素は微生物による取り込みにより、有機化が進行していると考えられた。 2)窒素無機化試験 コマツナの生育試験及び窒素無機化試験結果から、エコポット由来の窒素は一端土壌微生物に取り込まれ有機化し、その後無機化されることから、葉菜類のような栽培期間の短い作物よりも果菜類のような栽培期間の長い作物に対して肥料効果が期待できる。
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