研究概要 |
本研究ではRC造建物の耐震性を対象としているが,研究開始後にこれまで行われた耐震診断結果のデータを収集したところ,予想以上にデータ母集団のバラツキ(建設年,階数,平面形状etc.)が大きく研究計画に若干の見直しの必要が生じた。そこで本年度は階数や平面形状にバラツキの小さいRC造学校校舎に対象を絞ることとし,北海道内で診断済みの300強棟の診断データを建築士事務所協会および建築指導センター等から得た。 次に,全棟の診断内容の詳細について吟味したところ,診断書の内容に差異が大きく,すなわち第3次診断を行うのに必要となる情報が欠落しているものが少なくなく,全壊について3次診断を行うとした研究計画も見直さざるを得ないことが分かった。そこで約300棟のデータを分類してみたところ以下のように分類できた。 (1)第2次診断のみ行われており,3次診断を行うにはデータ不足(約8割) (2)第2次診断のみ行われておるが,3次次診断を行うためのデータが読み取れる(約1割) (3)第3次診断まで実施済みである(約1割) 圧倒的に数の多い(1)のデータを使わないことは余りにも非効率であると考え,(2)について3次診断を行いそれに(3)の結果を足し合わせることにより,先ず約2割の3次診断の結果を得た。次に残り8割の2次診断の結果から3次診断を夷施した場合の結果を予測できる式を構築しようと試みており,引き続き検討中である。 併せて,十分にデータ数のある2次診断結果について統計的な分析を行い次の結果を得,公表した。 1.Is値が0.6以下の(耐震性に疑問のある)校舎が7割もあり,被災の可能性が懸念される。 2.補強計画通りにもし補強が実施されるならば,予測される被害は大きく低減される。 3.限られた予算の中で効率よく補強を行うには,補強順序を適切に考えることが必要であるが,その順序の決め方には起こりうる地震の大小が大きく関係してくるので,建物個体で見るのではなく総合的な防災対策の面から検討が必要である。
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