本研究では、地球環境問題に対する建築構造分野でできる貢献として、リサイクル・リユースに適した建設材料である鋼材と、使用後は自然に還る天然材料であり、森林の再生能力と適切なバランスを保ち使用すれば極めて環境負荷が低い木材を組み合わせることで、環境負荷の低い構造形式を開発することを目的としている。合成構造とは、異なる性質を有する材料を組み合わせ、それぞれの材料の持つ短所を補完し長所を生かすことで、高い性能を有する構造を実現するものであり、これまでは、鋼材とコンクリートを組み合わせた鋼管コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートを指すことが一般的であった。本研究で開発する鋼木合成構造では、圧縮力に弱い鋼部材を木材で補強・補剛する構造部材を開発する。研究においては、鋼材と木材の組み合わせによる部材の構造性能を部材レベルの実験で明らかにし、部材の組み合わせにより構成される骨組の構造性能を、部分骨組の実験と数値解析により評価する。 研究初年度である平成15年度においては、まず構造部材として鋼材を用いた場合における弱点である圧縮力によって生じる座屈現象を抑えるため、木材による効果的な補強・補剛方法に関する実験研究を行った。実験では、軸力を受ける鋼材を、板厚・材質を変化させた木材で補剛し、弾塑性域において漸増変位振幅繰返し載荷を行った。弾性解析によって予測した補剛効果は、鋼材が弾性範囲に留まる間は概ね実験においても得られるという結果であった。鋼材が塑性化して以降の挙動については、塑性座屈における座屈後解析であると同時に、補剛効果も非線形となることから、来年度、鋼材ならびに木材の弾塑性履歴挙動のモデルを組み合わせた非線形座屈解析を行い、実験結果との整合性を検証することになる。今年度の実験結果は、非線形領域における解析を行っていく上での重要な基礎資料である。
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