建築構造物の履歴型ダンパーの一つである座屈拘束ブレースは、細長比の大きな芯材を座屈補剛材で拘束することにより、圧縮力を受けた際でも耐力低下を生じることなく安定した履歴挙動を示すことが知られている。環境問題の観点においては、ブレース等のエネルギー吸収要素を用いることで建築物の長寿命化を図ると同時に、その構成材として循環材料や再生可能な自然材料を採用することは合理的であるといえる。そこで本年度は、座屈拘束ブレース構成材に着目し、従来補剛材として用いられる材料と比較して木材のような強度・剛性が低い材料で芯材を拘束した場合の補剛性能に与える影響について実験ならびに解析により検証した。実験では、充填材として木材をはじめとする循環材料を用いた場合の、材料特性の違いによる座屈拘束ブレースの履歴性状の差異を調べた。その結果、鋼管が十分剛である条件下での補剛性能は、充填材の強度よりも初期剛性に寄与する割合が高いことがわかった。初期剛性がある程度低い材料を充填材としたブレースは劣化型の履歴挙動を示し、骨組に組み込んだ際にはエネルギー吸収能力の低下が確認された。また部材解析では、不安定現象である座屈問題を扱うため数値計算で追随することは非常に困難であり、部材を細かく分割した解析でも、補剛バネ剛性の大きさによっては追跡できない場合も見られたが、数値計算が安定する範囲において、繰返しの履歴を一方向に置き換えることで、芯材降伏後も安定した履歴挙動を示すために充填材に求められる剛性は、安定する領域の下限値を必要剛性とすることで求めることができた。また、必要剛性が実験結果と良い対応を示すことを確認した。
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