本研究は、震源近傍の強震動を支配しているアスペリティを適切にかつ簡便に評価し、強震動予測で用いる特性化震源のモデル化することを目的とする。以上の目的を達成するため、本年度は以下の項目について検討を行った。 1)逆解析プログラムの開発 本研究の基礎となる波形逆解析のプログラムの開発を行った。未知数をできるだけ減らし簡便な表現のために、アスペリティモデルをフォワードモデルとして、滑り量の他にアスペリティ位置を未知数とする逆問題を考えている。位置を未知数とすると線形和で表現できないため、非線形問題となり膨大な時間を要する。従来一般的に行われている最小自乗法ではこの問題を解くことは困難であり、本研究では遺伝的アルゴリズムを使うことによってプログラムを構築している。現在のところ、点震源をアスペリティとみなして、逆解析プログラム開発に成功している。今後、点震源モデルからアスペリティモデルへと発展し、特性化震源モデルの基礎資料を蓄積する予定である。 2)構造物被害と地震動の関連性 工学的な強震動予測を行うため、構造物被害と入力地震動の関連性について、兵庫県南部地震で倒壊した阪神高速3号線高架橋の被害について検討を行った。被害過程を少しでも明らかにするために、目撃者情報も検討すると、本震主要動がおさまってからもまだ倒壊せずに立っていた可能性があることが分かった。しかし、構造物に実質的に被害を与えている地震動は主要動部分であることを示した。
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