研究概要 |
前年度は,トラス構造物や剛接骨組構造物の弾性設計を対象とし,部材総体積,最大応力度および最大節点変位の最小化を設計目標とした多目的最適設計問題を取り扱っていた.また,最適化手法はStrength Pareto Evolutionary Algorithm (SPEA)を用いていた.今年度は,様々な設計目標を持つ構造設計問題にSPEAを適用し,SPEAの適用可能性や得られるパレート最適解の特徴について考察を行った.今年度の成果は以下のようにまとめられる. 1.重量とコンプライアンスを目的関数とした設計 部材応力度や節点変位といった局所的な構造性能ではなく,構造全体のひずみエネルギー,すなわちコンプライアンス(節点荷重と節点変位の積和)を目的関数とした.目的関数を2つにすることで,目的関数平面上にパレート最適解をプロットした場合,各目的関数間(この場合,重量とコンプライアンス)のトレードオフ関係が理解しやすくなった.また,トラス構造物の設計の場合,重量とコンプライアンスとのトレードオフ関係が反比例となることを,解析上および理論上明らかにした.一方,剛接骨組構造物の設計では,部材重量を考慮した場合,いくつかの局所最適解が存在することを明らかにした. 2.重量と破壊確率を目的関数とした設計 限界状態設計は,部材強度や荷重のばらつきを考慮した設計手法の1つである.本研究では,限界状態設計法に基づき,構造物の破壊確率として使用限界超過確率を導入し,この目標信頼性指標の最小化を目標として設計を行った.その結果,これまで扱った多目的最適設計問題とは異なり,得られるパレート最適解の数が少ないことが判明した.これは,目標信頼性指標の変化によって構造物に作用する荷重・耐力が大きく異なるためであると推測される.
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