本研究を通じて以下の成果を得た。 1.損傷推定問題を、損傷の位置を求める組合せ最適化問題と損傷の程度を求める非線形最適化問題の混合最適化問題として定式化した。また、欲張り方に基づき混合最適化問題の近似解を得るための手法を提案した。本手法は、損傷箇所の数が限られているが、その位置が不明な場合に有効である。 2.損傷を表すパラメタに関する誤差関数の感度解析結果を利用して、ある部材の損傷が応答観測値に与える影響の有無や、複数部材における損傷が応答観測値に同様の影響を与えるか否かを調べるための評価指標を提案した。本評価指標を用いれば、与えられた載荷条件や観測位置のもとで、どの程度詳細なレベルまで損傷が推定可能かを調べることが出来る。よって、本指標は最適な載荷方法や観測位置を選ぶ際に有用である。 3.複数部材が応答観測値に同様の影響を与える場合、応答予測値の誤差や観測値のバラツキがあると、混合最適化手法を直接適用するのみでは安定した推定結果推定結果が得られない。そこで、上記の感度を用いた評価指標に基づき応答予測値に同様の影響を及ぼす要素をグルーピングする手法を提案した。本グルーピング手法と、混合最適化手法を併用することにより、与えられた載荷方法と観測位置の下で出来るだけ詳細なレベルで損傷推定を行え、かつ観測値のバラツキや数値モデルの誤差に対して比較的安定した推定結果が得られる。
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