平成17年度は、建築構造物の損傷推定法に関する数値解析法の開発および実験を行い、以下に示す研究成果を得た。 1.骨組構造物を対象として、与えられた載荷条件の下で、できるだけ詳細なレベルで損傷や応力分布を推定する手法のプログラムを開発し整備を行った。また、人工的な誤差を含む観測値を用いた損傷推定のシミュレーションを行い、提案手法のロバスト性を評価した。本研究の成果を日本建築学会構造系論文集へ発表した。 2.骨組膜構造物を対象として、損傷の位置・箇所・程度や応力分を推定するための最適なセンサー配置をもとめる手法を開発し、数値実験によりその妥当性の検証を行った。本研究では、組み合わせ最適化問題を解くことにより、推定結果の分散が最小になる配置として最適センサー配置を求める。本研究成果を国際会議論文として発表した。 3.鋼構造建築物を対象として、耐火被覆の一部をはがすだけで梁フランジ破断などの損傷をもとめる手法について実験を行った。本手法では、ラム波(板波)と呼ばれる超音波の一種を用いる。ラム波は板全体が振動しながら伝播するため、耐火被覆などのおおわれた梁材においても一度に広範囲を検査できることが期待される。鋼材帯板を用いた実験結果から、クラックからの板波の反射波を確認できることを明らかにした。今後は、どの程度の亀裂や破断が確認できるかについてさらに調査を行う必要がある。 4.本研究課題の成果を「システム同定を用いた被災建築物の損傷評価法の現状と課題」と題して日本建築学会近畿支部第39回構造力学コロキウムにて発表した。
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