本計画では、地震動を受ける構造物応答の低減について、減衰に変わるメカニズムを有する動吸振器の特性のさらなる改善を目指し、パワードマスカプラ(連結振り子)式制震(振)システムの開発を目指し、実験的アプローチから本システムの有効性を検証するための研究を実施した。この制震装置は、動吸振器の付加質量を低減するかわりに、振り子部分の振動をアクティブに増幅する機構を設け、本来、地震等の外乱が生じている際に存在すれば十分である「制御力」をできるだけ「常駐型」設置の錘でなく、アクチュエータによる「非常駐型」供給に置き換えることをねらいとしている。 本年度の研究では、パワードマスカプラ式制震装置の理論モデルに基づく実験システムを作成するための準備段階として、以下のような項目について研究を実施した。 (1)制御装置の駆動部分の実験用試験体を作成するとともに、作動試験・性能評価試験を行い、所定の負剛性系を適切に再現するために必要な装置のスペックを検討した。 (2)パワードマスカプラ式制震装置の実験モデルの駆動状態の予備的計測結果に基づき、数値実験上でのモデルとの整合を行った。 (3)定点理論に基づき、パワードマスカプラ式制震システムの構成パラメータを適切に設計するための調整式の誘導を行い、数値実験によりその妥当性について検討を行った。 (4)パワードマスカプラ式制震装置の実用的な応用システムの提案を目指し、本装置を免震構造物の支承部に設置したハイブリッド式システムを試作し、その有効性を数値実験により検討し、その有効性を確認した。
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