| 研究概要 |
音響設計をより綿密に行うための波動数値解析の利用法として,従来の物理量(インパルス応答および残響時間などの各種聴感物理量)による評価だけでなく,音場再生による聴感評価まで含めたシステムを可能とすることを目指し,波動数値解析に基づく音場再生システムの構築ならびにその敵用性の検討を目的とした研究である。今年度はその基礎的段階として,まずPCクラスタシステムによる音場解析環境の整備を行った。その上で,本研究に主に用いることを予定している時間領域有限差分(FDTD)法に関する原理的な検討を行った。3次元数値解析では、3次元的な空間離散化に伴う計算機メモリの増大が計算を困難にしている大きな原因である。そこで計算を高精度化し、必要な離散化数をなるべく減らすことを目的として、●音源の初期条件、●差分に用いるスキームの2点に着目して、原理的考察および実際の数値解析による検討を行った。その結果、初期条件としては不要な高周波成分を十分なレベルまでカットできるガウス波形が望ましいこと、スキームについては高次差分を用いれば位相誤差を押えることができること、などがわかった。また、PCクラスタシステムを有効に利用できるように、これまでの計算プログラムをマルチプロセッシングが可能なコードに一部書き換えた。その上で、実際のホール音場の解析を行い、これまでよりも高い周波数帯域までのインパルス応答を計算できる見通しを得た。
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