研究概要 |
本研究では、イオンと空気中に浮遊するVOCの相互作用について、実験的に把握することを目的としている。具体的には、居住環境中に存在するイオンの形態の把握、イオン発生器から発生した空気と既知濃度のVOC空気を混合させた際のVOCの変化をガスクロマトグラフィ質量分析法(GC/MS)及び高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により生成ガス状物質の定性・定量分析を行うものである。また、イオンの発生方法によっては、オゾンやOHラジカルも存在も考えられ、ナノ微粒子の生成についても微分型モビリティアナライザ(SMPS)によりモニタリングする。 今年度は,空気清浄機などに備え付けられているイオンの発生源である市販のコロナ放電式イオナイザを用い,大気をAIPMS(大気圧イオン化質量分析計)に直接導入することにより,VOCの変換過程についての調査を行った。今回は高分子樹脂に酸化防止剤として含まれ,一般室内中でも検出されるDBPを汚染物質対象とした。結果として,装置のドリフト電圧(ここでは空間中の反応時間或いはイオナイザからの距離を表すと仮定)を変えることにより,DBP自体は少なくなり,無水フタル酸及びそれ以上に小さな分子に分解していることが判明した。今後はドリフト電圧と室内での状況についての関係を明確にする必要があるが,室内においても同様なことが起こり,ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類に変換する新たに二次汚染の原因となっている可能性があることを示唆している。また,超微粒子の生成についても今後検討する必要があると考えられる。
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