研究概要 |
本研究は,子どもの健康的で快適な遊び場の創出に必要な温熱環境評価指標を,住民参加型公園の計画プロセスへ導入するための基礎資料を提示することを目的としている。本年度は,住民による街づくり事例や,市民による子どもの教育や地域活動がみられる名古屋市を対象として,住民参加型公園の計画プロセスに関するヒアリング調査と,子どもの遊び場の利用実態調査および温熱環境実測を行い,以下の知見を得た。 (1)名古屋市における住民参加による公園づくりに関するヒアリング調査 名古屋市でも特に住宅系の用途地域が多い昭和区を対象として,子どもの身近な屋外の遊び場である街区公園を調査対象とした。住民参加によって計画された街区公園のうち本年度は2公園を選定し,計画時の会合記録等の資料から施設条件や計画プロセスの基礎データを得た。また,このときの計画から造成までの経緯や体制等について関係者へヒアリングを行い,住民の関わり方や提案事項を抽出した。さらに,名古屋市の幼児向けの遊び場として私有地を転用して設置されている「どんぐり広場」の計画指針に関する基礎データを得た。 (2)街区公園内の子どもの利用実態に即した夏季の温熱環境の実態調査 昭和区における街区公園の平均面積(0.1ha)と同規模の街区公園に対して予備観察調査を行い,遊具や設備条件が同程度で緑被率の大小から3公園を選定した。さらに,温熱環境が特に悪化すると考えられる夏季において,公園利用者の利用実態と,その主な滞在場所における温熱環境を実測により把握した。公園利用者数のピーク時においても,遊具の表面温度は最大で60℃まで達していた。また,乳幼児の主な遊び場は砂場であり,その保護者は日陰から見守る傾向が高かった。また,生活習慣だけでなく,屋外の熱環境が利用時間帯の選択にも影響を与えていることがアンケート調査およびヒアリングから明らかになったが,利用実態からは保護者が子どもの遊び場の温熱環境へ配慮する行為は見られなかった。
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