筆者らは土壌を必要とせず仮根により多孔質体に定着する特性を持つコケ植物を用いた軽量な壁面緑化システムの試作を行った。緑化パネルは、コケを育成させる基盤材と基盤材下部を固定するプラスチック板で構成される。コケはギボウシゴケ科のスナゴケを用いており、コケの中でも特に乾燥に強く直射日光に耐性を持つ。これを蒔きゴケと呼ばれる手法で基盤材に育成定着させている。尚、コケを蒔く前にコケの根からよく土や砂を取り除き、短い仮根が基盤材に定着しやすくしている。コケを育成するための基盤材料としては、カーペット、稲藁、ココナツファイバーシート、感温性吸排水性樹脂、水槽濾過用スポンジ、水槽濾過用綿、不織布を取り上げた。 7種類の基盤材料にコケを育成し長期間屋外に設置して、定着の様子を観察した。その結果、カーペット、ココナツファイバーシート、不織布の3種類は、コケの生育・定着が良好であり、基盤材として適していると判断された。 作成した試験体の中でも比較的定着が良好であったココナツファイバーシートと不織布を基盤材としる試験体を屋外の鉛直壁面に固定して数ヶ月間自然環境に曝露し、コケの外観変化を観察した。その結果、ココナツファイバーシートを基盤材とする試験体は、定期的に散水を行った場合全面積の約50%のコケが剥離した。これは試験体作成時のコケの定着期間が不十分であった事が理由と考えられる。 次に、試験体について蒸発特性(蒸発比-含水率の関係)、熱コンダクタンス-含水率の関係を実験により明らかにした。また、コケの湿潤状態と乾燥状態における日射反射率を測定し入射角依存性を考慮した直達日射反射率の推定式を提案した。
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