加齢に伴う身体機能低下により、高齢者は日常生活において様々な困難に直面することも多く、事故の発生率も極めて高い。加齢による黄変化問題も、非常に重要な課題の1つである。特に、実際の建築空間・都市空間においては、視対象を同定すること、すなわち、視対象を探索する過程における色彩識別能力をモデル化することが極めて重要な意味を持つ。にもかかわらず、この分野は未だ研究例はほとんどないのが現状である。本研究の目的は、実際に被験者を用いて、視対象が予め示されていないときに視対象を探索する場合の色彩識別能力を心理物理的にモデル化することである。 初年度は主に、20代から70代まで、世代異なる約15名の被験者を対象に、視覚刺激生成器を用いてポップアウトしない図形を作成し、探索能力評価実験を行った。各被験者は156通りの色の組み合わせ×8回の試行を行い、色彩の組み合わせと加齢による探索能力の変化の関係について、分析が行った。ここでは、探索能力として、探索時間を指標に用い、156通りの色の組み合わせそれぞれの探索時間より、心理物理的色空間を、多次元尺度法を用いて解析した。その結果、探索対象の識別に際し、高齢者ほど、明度差が大きいほど探索が容易であること、彩度差が大きいことも探索時間に影響を及ぼすこと、明度差についてはそれほど探索には役立たないことが明らかとなった。 また、次年度計画している実際の都市景観画像を用いた探索能力評価実験のための、各種評価画像の撮影についても行った。
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