情報技術の進展による大きな社会変化として、月尾嘉男東京大学教授は次の5つを例示している。(1)地理社会から情報社会への変化、(2)規模経済から速度経済への変化、(3)階層構造から直結構造への変化、(4)供給主導から消費主導への変化、(5)有償サービスから無償サービスへの変化である。そこでこれらの社会変化を一つの視点とし、情報技術の進展に伴う新しい事例を、関連すると思われる社会変化の項目別に整理した(この変化項目の適用は精査中)。こうした事例はユビキタス社会における建築の役割と大きな関係があると思われるが、すなわち、(1)ユビキタスコンピューティングや遠隔医療の実現に見られる個別の建築からの離脱、(2)ベンチャービジネスの台頭やインターネットの普及で求められる空間の柔軟性、(3)メーカー直販や個人による情報発信の拡大に見られる建築の情報装備化、(4)消費ニーズの多様化、ユーザー企画商品の拡大に見られる空間を通じた表現の個性化、(5)インターネット広告の拡大やサービスレベルの階層化といった経済ルールの変化(建築は表面的には変化しない可能性あり)、である。 一方、建築ストックとして絶対量が多く、社会的影響が大きいのは住宅とオフィスである。また、大きな変化が予測されるのはオフィスであることから、オフィスでの業務特性における情報流通技術という視点から、それらが空間に与える影響について、レイアウト、満足度、実際の利用状況に関する実態調査を行った。この結果、情報流通技術がオフィス空間へ与える影響は、業務特性が違う部署毎にそれぞれ異なることを確認した。これは業種によって変化の大きさ、あるいは変化の速度が異なる可能性を示している。
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