社会変化の様子という視点によって昨年度の研究で分類した、情報技術の進展に伴う新しい事例とユビキタス社会における建築の役割に関する項目を参考にして、情報化によって建築空間に影響を与えていると思われる先進事例を調査し、その変化の傾向について、規模、形態、立地それぞれの観点から検討を行った。その結果、規模については、多くが小さくなる傾向にあった。形態については、特に小売業の集中化傾向が大きく(情報化が現状の大規模店舗化に拍車を掛けているという見方もできる)、それ以外は変化無しと分散化の傾向にある。立地については、変化無しと郊外化が半々程度であった。これによって既存建物活用の基礎となる傾向把握ができたが、具体的な活用手法については、個々の状況による違いが大きいため十分な結論に至らなかった部分が多く、今後の課題である。ただしこれらは先進事例であり、一般的な傾向を示したものと迄は言えない点に留意する必要がある。 建築ストックとして絶対量が多く社会的影響が大きいオフィスについて、昨年度実施した調査、および今年度の複数社に対する予備調査では、オフィス空間の作り方や働き方に変化が表れていることが観察されている。しかしながら、昨年度と同様のオフィス実態調査を再度行ったところ、情報流通技術がオフィス空間へ与える影響は、業務特性が違う部署でも似たような傾向であるという結果が得られた。これは昨年度の調査結果による、業種による空間変化の大きさや速度が異なる可能性の予測、とは異なるものである。この要因としては、企業としての業務特性の違いや、オフィスに対する考え方の違い、組織形態の違い等が想定でき興味深い結果であるが、これについては今後の検証が必要である。 このテーマでは、まだ十分に研究できなかった部分も多く、補助金研究期間終了後も引き続き研究を継続することとしている。
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