研究概要 |
本研究は,防災面での脆弱性を改善しようとするわが国の木造密集市街地の取り組みに対して,小規模低・未利用地に着目し,これら様々に分布する小空間に対する計画的介入方策を定量化するための基礎的研究である. 本年度は,主として基本となるデータベース(DB)の構築を行った.対象は豊島区,葛飾区,練馬区,世田谷区とし,ベクター型データをベースに,各区自治体での密集市街地空間改善の働きかけに応じて相違を持たせた.具体的には以下のとおりである. 練馬区では,事前復興まちづくり訓練に運営メンバーとして参加し,地域の防災・住環境アセット調査を住民参加で実施,また被害想定図作成や復興シナリオをDBを用いて作成する中で,DBを構築し拡張していく方法について検討した.葛飾区では区ワイド道路管理台帳や基盤整備事業区域図を借用し,DBを構築すると同時に,密集事業が実施されている四つ木地区のまちづくり協議会に常時参加し,改善シナリオを現場からの視点で検討した.豊島区,世田谷区は防災まちづくりの実績があり,行政,住民,住民組織といった各主体の活動について経験を有している.そこで防災まちづくり担当者と自主的な勉強会を開催し,現場にとって有効で操作性のある指標が具備すべき要素について意見交換をした. 以上の基礎的なDBの構築,および現場での実践を通した介入方策シナリオの検討と並んで,密集市街地を対象としたミクロな住環境指標を数理モデル的に検討した.空地の「密度」ではなく「配置」という視点から出発し,腰塚(1989)モデルが建物に対して一律に距離rを与えた張り出し空間を無効空地としていたのに対し,建物多角形を離散点化することにより,建築まわりの外部空間を直接的に把握するモデルを構築した.モデル街区,現況街区双方で数値実証済みであり,来年度に随時発表を予定している.
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