研究概要 |
本研究は低層高密市街地を対象として,日照・採光などの居住環境の確保の面で特に大きな役割を担っている街区周辺の街路自体が持つ,居住環境を担保する性能について,定量的な評価を行うことを目的としている。本年度は,大きく分けて1)対象敷地の選定,2)数値地図データの選択,3)街路幅員・方位データの生成の3つの作業を行った。まず対象敷地については,東京都心部周辺において,いまだに防災上の問題をかかえ,かつ基盤整備も進んでいない地域として,中野区を選定した。次に数値地図データの選定をおこなうため,現在市販・公開されている数値地図データを比較検討した。網羅する地域の多きさ(網羅性),データの詳細さ(詳細性),ファイルフォーマットが公開されているかどうか(公開性),およびテキスト形式など扱いやすい形式であるか(汎用性)などの観点から検討を加えた結果,国土地理院から発行されている,数値地図2500を用いることとした。街路幅員・方位データの生成については,以下のステップを踏んだ。すなわち,1)地図データ内に存在する街区データの加工(隣接しながらも異なる街区と扱われている街区群の統合),2)複数図郭の統合,3)街路部分の3角形分割,4)街路を覆う3角形を利用し,中線の生成による街路長・方位の算出と,その面積を用いた街路幅員の算出を行った。3)を除いてはC言語による自作のプログラムを開発した。3)については,カーネギーメロン大学コンピューターサイエンス学科で開発された,平面3角形分割ソフトウェアである,「triangle」を用いた。今後は生成されたデータの精度を検証するともに,街路に面した壁面における日照・採光環境の評価指標を整理し,これらの知見を統合して,現行の形態規制を遵守して街区が形成された場合の,街路側から享受される日射・採光の定量的評価を行う予定である。
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