本研究は今後の公営住宅における高齢化対策を考えていく上で、高齢者の孤立防止に着目し、1.公営住宅における高齢者の孤立の実態を明らかとし、住宅管理面からの問題を整理すること、2.全国の自治体で試みられている住環境支援の取り組みを収集し、その供給手法や運営システムなどを明らかとし、住環境支援を展開するための供給モデルを作成することを目的としている。 研究開始にあたる平成15年度は、公営住宅団地の高齢化の実態と現在試みられている住環境支援の取り組みの収集を目的として、全国自治体への郵送アンケート調査を行った。調査対象は一定の都市規模を持つ自治体とし、公営住宅法施行令別表より778市区町村を抽出した。これに都道府県を加えた計825の自治体を対象とした。配布回収は、都道府県では47票配布、35票回収(有効回収率74.5%)、市区町村では778票配布、595票回収(有効回収率68.7%)であった。 調査の結果、全国自治体の公営住宅管理下における高齢化と孤独死発生の実態が明らかとなり、41事例の高齢化対策への取り組みを把握した。分析より、孤独死は過去1年間に都道府県では65.7%、市区町村では28.9%で発生し、中でも人口規模の大きい自治体において発生の割合が高い。孤独死の発生には都市化の影響がみられるが、人口規模が小さい場合でも孤独死が集中的に発生している自治体がみられた。公営住宅管理者の意識では、高齢者対応住宅の設置や既存住宅のバリアフリー化などのハード面の強化による高齢化対策に関心が高い傾向にあった。しかし、高齢者対応住宅の整備状況と孤独死発生率との間には相関は少なく、ハード面のみの高齢化対策には限界が指摘される。 今後は、収集した高齢化対策の取り組みの実態と効果に関する調査及び本調査対象より抽出した典型的自治体を対象に孤独死発生のメカニズムについて新たな調査を行う予定である。
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