本研究は今後の公営住宅における高齢化対策を考えていく上で、高齢者の孤立防止に着目し、1.公営住宅における高齢者の孤立の実態を明らかとし、住宅管理面からの問題を整理すること、2.全国の自治体で試みられている住環境支援の取り組みを収集し、その供給手法や運営システムなどを明らかとし、住環境支援を展開するための供給モデルを作成することを目的としている。 平成15年度の調査より、孤独死は人口規模や人口密度との相関がみられ都市化の影響があること、発生する環境的要因では、住宅の性能や緊急時の対応よりも周囲との関わりが少なく孤立した状態が孤独死発生の大きな要因となっているがこの点への対策は極めて少ないこと等が明らかとなった。 本年度は昨年度の全国郵送アンケート調査より把握した公営住宅団地居住者の交流促進事業の現状に関する調査(収集した35事例より類型化を行い10事例を抽出)及び高齢化した公営住宅団地居住者を対象とした高齢者の孤立と近所づきあいに関する居住実態調査(調査対象:建替予定の周南市営住宅/有効回答151票)を行った。 分析の結果、住環境支援の取り組みとしては、団地内の共同空間を活用し、日常的な利用が可能な設置形態と住民の主体的な参画のある交流促進事業が高齢者の日常生活を支援する新たなタイプと位置づけられた。また、老朽化した公営住宅団地の高齢者の居住実態は、隣近所からの援助が多く、特定の空間を用いた日常的な交流が孤立防止に必要不可欠であること等が明らかとなった。まとめとして、孤立防止に必要な条件を満たす住宅団地の設計シミュレーションを行い、今後の公営住宅団地の更新には、従来型の集会所ではない日常的な交流の場としての共同空間の設置と共同空間の管理に援助者を取り込む運営システムが提案された。
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