1 写真史料の収集・整理 幕末・明治期に撮影された写真史料(古写真)のうち、江戸以来の武家屋敷(大名屋敷)、寺社などの建築、都市景観に関するものの収集・整理を行った。幕末期の撮影と考えられる写真は20点程度であったが、明治以降の写真であっても、官公庁等に転用された後の旧武家屋敷が写ったものなど、都市江戸の建築・都市景観の史料として価値の高い写真が多数(数百点)確認された。具体的には下記のようにして、写真の収集・整理を行った。 (1)既刊の写真集(『F・ベアト幕末日本写真集』、『大日本全国名所一覧』、『東京写真大集成』、『明治の日本』、『鹿鳴館秘蔵写真帖』など)から約400点の写真を抽出し、スキャナーによって画像データを作成した。また、その一部をデータベース化した。 (2)写真史料原本の所蔵機関(横浜開港資料館、徳川林政史研究所、東京国立博物館)において閲覧・調査を行い、従来、刊行物で紹介されていない写真を含め、合計100点ほどの写真の複写を収集・整理した。 2 写真史料の分析 収集した写真史料のうち、とくに貴重なものと認められた数点(愛宕山からのパノラマ、天徳寺境内、三田綱坂、秋月藩黒田邸、市谷八幡町、羅漢寺三匝堂など)について、関連する建築図面(屋敷絵図・境内図)・資料(「旧幕府引継書」など)を所蔵機関(国立国会図書館、東京大学付属図書館など)において収集した。そのうち、羅漢寺三匝堂の写真(横浜開港資料館所蔵)については、関連資料と比較しつつ内容の分析を行った結果、三匝堂の建築形態・配置に関する重要な知見が得られたため、研究論文として公表した。
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