1 写真史料の収集・整理 前年度に引き続き、幕末・明治初期に撮影された写真史料(古写真)のうち、江戸以来の武家屋敷(大名屋敷)・寺社などの建築・都市景観に関するものの収集・整理を行なった。ただし、江戸城・増上寺・浜離宮など幕府関係の施設については、きわめて多数の存在が認められたため、それ以外の対象を写した写真の収集・整理を優先することとした。 その結果、幕末期の撮影と推定される写真は前年度より増加し、ベアト撮影の写真を中心に45点(同じ原版による重複を含む)ほど確認できた。また、明治初期の撮影のものは、150点程度(うち63点は、『THE FAR EAST』誌掲載写真)の存在を確認した。以上の写真については、その被写体・所蔵機関・掲載写真集などの情報をデータベース化した。写真の所蔵機関は下記のとおりである。 ・東京都写真美術館・横浜開港資料館・徳川林政史研究所・東京国立博物館・霞会館・放送大学附属図書館・国際日本文化研究センター・長崎大学附属図書館・ライデン大学 2 写真史料の分析 前年度に引き続き、収集した写真史料のうち、とくに貴重と認められた写真(愛宕山からのパノラマ・三田綱坂・秋月藩黒田邸・市谷八幡町・永田町のパノラマ・浅草寺など)について、関連する建築図面(屋敷図・境内図)・文献史料(「旧幕府引継書」など)を所蔵機関(国立国会図書館・東京大学附属図書館など)において収集した。そして、収集した資料を写真と比較・照合しながら、被写体の特定作業、建築・都市空間の形態的特徴の分析を行なった。また写真の歴史史料としての可能性と限界について、史料論的視点から考察を行なった。
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