今年度は、韓国における歴史的建造物保存修復に調査研究対象を絞り込み、その基礎情報の収集を主な課題とした。具体的な作業としては、保存修復についての現地調査と、文化財保護行政関係者及び韓国の建築史研究者との情報交換をおこなった。 実地調査としては、まず韓国における建造物保存・修理の実態を理解することを目的とし、現在修理工事が進行中である法住寺大雄殿の修理工事を視察した他、既に修理工事がおこなわれている木造建築のうち、鳳停寺極楽殿、浮石寺無量壽殿等の年代が古い建造物について実地調査を実施した。 また、保存、修理の内容を包括的に把握するために韓国文化財庁を訪問し、行政担当技官各氏へのヒアリング及び文化財保護関係資料の収集をおこなった。 韓国の建築史研究者との情報交換としては、6月に長野市においておこなわれた日韓都市・建築史ワークショップWuha)において「東アジア木造建造物保存・修復史研究への視座」と題した報告の機会を持ち、東アジアにおける歴史的建造物保存・修復史研究の方法論について、近代建築史としてそれを論じていくべきとする内容を中心とした私見を提示し、意見交換をおこなった。 以上の活動と並行して、東アジア比較研究の下敷きとすべく、日本における歴史的建造物保存修復についてこれまで研究を進めてきた内容を、論文として報告する準備をおこなった。 次年度は、韓国における建造物保存修復の歴史と現状につき、現地調査を含めたさらなる調査をおこない、具体的な日韓比較を行う予定である。
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