研究概要 |
本研究ではAl-Mg-Sc合金を用いて,第二相析出物を含む超微細結晶粒材料の疲労挙動と転位組織の関係を明らかにしようとした研究であり,平成15年度はECAP法により得られた超微細結晶粒材料の焼鈍過程における組織変化を透過型電子顕微鏡を用いて観察し,微細結晶粒組織の熱的安定性を考察した.得られた結果は以下のようにまとめることができる. (1)Sc添加により超微細結晶粒をもつAl-Mg合金の再結晶温度は250℃から350℃へと上昇した. (2)結晶粒内・粒界上に析出したAl_3Sc析出物によって粒界移動は強く抑制され,300℃・最長60日の焼鈍後も1ミクロン以下の微細結晶粒を保持していた. (3)焼鈍に伴う微視組織観察と集合組織観察結果より,結晶粒の成長に関わらず集合組織は変化しない連続再結晶によって微細結晶粒の成長が起こることを明らかにした. (4)結晶粒サイズとAl_3Sc析出物のサイズの間には線型関係が成り立ち,結晶粒径はZenerによる第二相存在下における臨界結晶粒サイズにおおむね一致し,Al_3Sc析出物の粗大化成長によって支配されることを明らかにした. 以上のように得られた結果より,耐熱性・機械的性質に優れた材料の最適熱処理条件を検討した.平成16年度は,最適熱処理条件にて得られた試料の機械的性質の調査,特に低サイクル疲労試験を行い,疲労挙動と内部微視組織の関係を調査する予定である. また,ECAPを施していない通常のAl-Sc合金およびAl-Mg-Sc合金を用いて,Al母相中のAl_3Sc析出物の粗大化成長を調査しAl母相/Al_3Sc析出物間の界面エネルギーを過去の研究結果を参照せず,約220mJ/molと見積もった.さらに,Al-Sc合金にMgを添加してもAl_3Sc析出物の粗大化成長に影響を与えないことを見いだした.
|