硬質磁性を示す方位配向FePt・FePdナノ粒子の規則化・配向支配因子解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15760490
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 佐藤 和久 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (70314424)
• キーワード: FePt / FePd / 基板拘束 / 外部磁場 / 磁化容易軸 / L1o型規則相 / 単磁区粒子 / ナノ粒子

研究概要

FePtナノ粒子の規則化過程に及ぼす基板拘束力ならびに外部磁場の影響を調べ、磁化容易軸(c-軸)配向制御の可能性を検討した。ナノ粒子蒸着前の基板処理ならびに蒸着時の基板温度により形成される組織形態・粒配向は大きく影響を受け、高配向・高分散・高保磁力を有するFePtナノ粒子を作製するためには、基板温度623K以上での蒸着と873K以上での熱処理が必要であることが判明した。このとき単結晶基板上でFePtナノ粒子はエピタキシャル成長し、生成する規則相が正方晶であることからその磁化容易軸であるc-軸には空間的に3通りの配向が存在する。そこで蒸着後に基板を溶解除去した試料とナノ粒子を基板上に分散させたままの試料について真空炉中にて熱処理を行い生成する規則相粒子の粒配向を調べた結果、両者で顕著な差異は認められなかった。故に基板拘束力は蒸着時の結晶成長初期過程で粒配向に大きく影響するが、その後の熱処理過程での粒配向変化にはほとんど影響が無いといえる。次に透過電子顕微鏡内にて試料に熱処理を施し規則化過程に及ぼす外部磁場の効果を検討したところ、693Kにて8h熱処理した試料において磁場印加により規則相のc-軸はほぼ膜面垂直方向に配向していることが広領域での制限視野電子回折図形から判明した。723K以上にて熱処理した場合には磁場効果は見られなかったことから、本研究で用いた10nmサイズのFePtナノ粒子の磁気転移温度が693-723K付近に存在すると推察される。以上の結果、磁場中熱処理はFePtナノ粒子の磁化容易軸配向制御に有効であることが判明したが、熱処理温度が磁気転移温度以下に制限されるため、より短時間の熱処理で十分に規則化させ高保磁力を得る方法を検討する必要がある。さらに電子回折によるFePtナノ粒子長範囲規則度測定を行い、規則度測定精度に及ぼす種々の因子の影響について現在検討中である。

研究成果

• [文献書誌] K.Sato, Y.Hirotsu: "Structural characterization of oriented L1o-FePd nanoparticles"Transactions of the Materials Research Society of Japan. (in press). (2004)
• [文献書誌] K.Sato, Y.Hirotsu: "Magnetoanisotropy, long-range order parameter and thermal stability of isolated L1o FePt nanoparticles with mutual fixed orientation"Journal of Magnetism and Magnetic Materials. (in press). (2004)
• [文献書誌] K.Sato, Y.Hirotsu: "Long-range order parameter of oriented L1o-FePt nanoparticles determined by electron diffraction"Materials Transactions. 44(8). 1518-1522 (2003)
• [文献書誌] K.Sato, Y.Hirotsu: "Structure and magnetic property changes of epitaxially grown L1o-FePd isolated nanoparticles on annealing"Journal of Applied Physics. 93(10). 6291-9298 (2003)
• [文献書誌] K.Sato, T.Kajiwara, M.Fujiyoshi, M.Ishimaru, Y.Hirotsu, T.Shinohara: "Effects of surface step and substrate temperature on nanostructure of L1o-FePt nanoparticles"Journal of Applied Physics. 93(10). 7414-7416 (2003)