本年度においては、昨年度までに確立した粒子合成法を用いて精密にサイズ・形態が制御されたアナターゼ型単分散チタニア粒子を作製し、その光触媒活性の評価を行った。昨年度までに、チタンの水酸化物ゲルを原料としたチタニア粒子の水熱合成時に、吸着剤を投入することにより、針状および立方体状に粒子の形態制御が可能であることを見出している。また、その系に粒径5nm程度の種粒子を添加することにより、チタニア粒子の粒径を制御出来ることも判明している。本年度においては、種粒子の添加量を調整することにより、粒径の異なる粒子を、特に針状に形態制御した系において系統的に調製した。粒子の結晶構造解析の結果、得られた針状粒子においては、(100)面が優先的に広がっていることも明らかとなった。粒子の光触媒活性の評価を、水中におけるメチレンブルーの分解試験により行ったところ、針状に形態制御された粒子は、形態制御を行っていない球形粒子に比べて活性が高いことが判明した。針状に形状異方性を有する粒子は、メチレンブルーが吸着しやすいことも明らかとなった。また、針状粒子の粒径が、光分解特性、吸着特性の双方に大きく影響することも判明した。以上のことから、今回作成した(100)面を選択的に広げた針状粒子は、紫外光の当たらない夜間においては吸着剤、昼間は光分解触媒として機能する環境浄化材料として大変有用であることが判明した。次年度は、光触媒活性をもっとも発揮出来るように粒子形態の最適化を試みる。また、針状粒子を配向させた状態で塗布することにより、アナターゼの(100)面を選択的に広げた配向膜を作成し、高活性な環境浄化用塗布膜材料の作製を試みる予定である。
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