今年度は二つの研究テーマについて研究を行った。(1)フェムト秒レーザー照射により純粋シリカガラスの構造誘起 純粋シリカガラスは光伝播材料や半導体基盤材料などあらゆる分野で応用され、現代高度情報社会になくてはならない材料の一つである。シリカガラス内部に排除しにくい不純物が存在することにより、さまざまな光学特性が妨げることになるその化学構造が比較的単純であるゆえに解明されていないことがある。一方、この性質を利用して、ガラスに欠陥を導入することにより新規な光機能性を持つ材料として期待している。今回、800nm 1kHzのフェムト秒レーザーを用い、異なる濃度の水酸基含有量をもつシリカガラスに三次元的に照射し、その試料を蛍光スペクトル、励起スペクトル、電子スピン共鳴スペクトルなどで解析を行った結果、フェムト秒レーザー照射部のガラスが構造変化していることがわかった。また、その構造変化はガラスに含まれる水酸基の濃度とレーザー照射の深さに大きく関係していることが分かった。報告人はこの実験事実を基づき、フェムト秒レーザー照射による誘起された構造のメカニズムを提案する。また、この実験の結果は三次元光メモリデバイスとしても可能である。(2)光活性イオンを添加した透明結晶化ガラスの長残光現象 材料が励起光を遮断後も発光し続ける現象は長残光現象といい、昔から放射性物質を使った材料が利用してきた。しかし環境汚染や人体に悪影響を与えるため、近年非常に長い残光性を持った希土類イオンを添加したセラミックス材料に置き換えられた。しかしながら、多結晶であるため不透明や加工成形しにくい面が残る。ガラスは透明で加工しやすいが、残光の強度や寿命の面でセラミックスには及ばない。そこで本研究はMn^<2+>を添加したGeO_2-B_2O_3-ZnO系特殊なガラスを作製し、熱処理を加え、ガラス内部に粒径約1μmのMn^<2+>:Zn_2GeO_4微結晶を析出させることにより、透明性を維持したまま、結晶体と同等な光性能をもつ材料を初めて見出した。またガラスでは赤色発光を示すが、微結晶を析出したガラスでは緑色の発光が観測された。報告人はその残光メカニズムと析出結晶の関連性を調べた。
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