今年度は二つの研究テーマについて研究を行った。 (1)フェムト秒レーザー照射によりガラス三次元結晶化 近年の通信、情報関連技術の発展に伴い、光情報の大容量化、高密度化がすさまじい進歩を遂げており、情報処理のデータ三次元化の要求も高まっている。本研究はフェムト秒照射することにより、酸化フッ化物ガラス中に希土類イオンを含有したフッ化物結晶を立体的に析出させることに成功した。結晶の部分だけがある特殊のレーザーを照射すると発光するが、照射されていない部分は発光しない。この実験の結果は三次元ディスプレイとしての可能性を示した。従来の二次元立体ディスプレイと異なり、可視光が三次元実画像として得られるため、特殊眼鏡も不要で、また、あらゆる方向から実像を観測できる点で、ホログラフィーやバーチャルリアリティー画像より優れている。これはアップコンバージョン特性をフルに発揮した優れたシステムであり、今後、医療分野における画像診断をはじめ幅広い展開が期待されている。 (2)長残光ガラスの部分結晶化および高圧印加による構造制御 材料が励起光を遮断後も発光し続ける現象は長残光現象といい、昔から放射性物質を使った材料が利用してきた。しかし環境汚染や人体に悪影響を与えるため、近年非常に長い残光性を持った希土類イオンを添加したセラミックス材料に置き換えられた。我々は、透明性を維持したまま、普通の残光ガラスより残光強度の高い残光寿命の長い、Mn^<2+>を添加したGeO_2-B_2O_3-ZnO系透明結晶化ガラスを開発した。本研究では、この系のガラスに対し、2軸方向高圧印加実験が光物性の変化は見られなかった。さらに、CO_2レーザーを用いて、この系のガラスに照射実験を行った。その結果、CO_2照射した部分だけ粒径約1μmのMn^<2+>:Zn_2GeO_4微結晶を析出させることにより、透明性を維持したまま、結晶体と同等な光性能をもつ材料を初めて見出した。照射していない部分では赤色発光を示すが、微結晶を析出した部分では緑色の発光が観測された。これを文字盤の夜光材料などに実用化できると考えられる。
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