圧電材料分野では、完全鉛フリー化への移行を重要視しており、実用的な鉛フリー圧電材料の研究開発が急務となっている。本研究では、難焼結性のKNbO_3に焦点を当て、その焼結および薄膜化プロセスの確立、圧電物性の精密評価、更に結晶構造の解析を行った。 原料調合から焼結合成に至るまで、一連のセラミックプロセッシングの最適化を図った結果、高密度のKNbO_3単相焼結体が常圧焼結で得られた。この焼結体は、水中で経時保持した場合でも潮解性を全く示さず、これまでの難焼結かつ組成不安定性という常識を覆した。さらに、LaおよびFeをドープした場合には、(K_<1-x>La_x)(Nb_<1-x>Fe_x)O_3固溶体が合成されることを放射光X線回折および放射光X線吸収微細構造解析で確認し、このうち微量添加となるx=0.002の場合には、常圧焼結にも係わらず相対密度が98%という高い値を得られた。その結果、(K_<1-x>La_x)(Nb_<1-x>Fe_x)O_3セラミックス(x=0.002)ではキュリー温度(T_c)425℃、残留分極値P_r=18μC/cm^2および坑電界値E_c=9kV/cm、電気機械結合定数は径方向k_p=0.17、厚さ方向k_t=0.47を示し、圧電定数d_<33>は98pC/Nという優れた物性を発現させることに成功した。 一方、液相エピタキシー(LPE)法を用いた高品質のKNbO_3透明単結晶薄膜の合成プロセスを確立した。原子間力顕微鏡(AFM)によって、欠陥を含まない高品質のKNbO_3ドメインが等間隔ステップで成長している様子を観察した。この薄膜は70%を越える透過率を示し、特定入射方位において大きな第2高調波(SHG)を出力可能であることも確認した。
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