本年度は、短繊維補強されたセメント系複合材料の耐久性評価に於いて重要となるセメントマトリクスの細孔構造に着目し、繊維の混入によってマトリクスの細孔構造がどのように変化するかを明らかにするため、ポリプロピレン短繊維を混入した数種の試験体について水銀圧入式ポロシメータを用いて細孔径の分布性状を測定、考察した。 測定には、一般的なモルタルマトリクスと粉末珪石を混入したセメントマトリクスの2種類の試験体を使用した。これらに対して繊維混入量3水準(1.0、2.0、3.0体積%)、繊維形状3水準(繊維径100μm、24μm、14μm。繊維長6mmで統一)の9種類の試験体を作成し18種を考察対象とした。なお、セメントを完全に反応させるため、試験体の養生は160℃8時間のオートクレーブ養生とした。 上記の試験体について細孔径分布の測定を行ったところ、繊維径が小さくなるほどセメントマトリクス中の細孔は増加することが明らかになった。また、増加する細孔は主に0.1μm以下の径を持つものであり、それ以上の細孔径ではマトリクスを問わず増加は若干であった。なお、今回の測定の中で径が100μmの繊維とモルタルを使用した試験体では、細孔構造にほとんど変化が現れないものもあり、細孔径の分布性状は繊維の形状に大きく影響されることが明らかになった。 今後の研究の展開としては、上記試験体を使用した電気泳動式急速塩化物透過性試駿(現在進行中)の結果と細孔構造との比較検討を行い、繊維混入によるセメント系複合材料の塩化物拡散係数の変化について評価を行う予定である。
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