本研究では、天然ガスからの水素製造に用いる高酸素イオン・電子混合導電性酸素透過メンブレイン(MIEC-OPM)の開発を実施している。対象材料は、これまでに9sccm/cm^2と高い酸素透過速度を示すことが確認されているセリウム酸化物とスピネル型フェライトの微細結晶からなる複合体、及び、Pr-Al系ペロブスカイト型酸化物とした。 GdドープCeO_2(GDC)をマトリックス相としたGDC-Spinel複合体は第2相のスピネル酸化物の体積分率がパーコレーション臨界値(【approximately equal】20vol%)よりも低い15vol%、さらには3vol%においても混合導電性を発現することが特徴である。今年度はまず、種々の体積分率を有する試料に関して電子顕微鏡にて微細組織を観察した。GDC単相〜30vol%添加試料の微細組織をTEMにより観察したところ粒界相の存在が認められ、本複合体の酸素透過に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、さらなる透過特性の向上を目指して最適複合化条件を検討した。GDCに代わりPr添加系(PDC)およびSm添加系(SDC)が新たなマトリックス相としてすぐれている可能性を示した。そこで、経時安定性も含めた観点で最適マトリックス相の評価を行った。その結果、PDCは初期性能として高い透過特性を示すものの経時劣化が激しいこと、これに対し、SDCは劣化が起こらないことが確認された。続いてSDCの最適化を試みた。生成相をX線回折により同定したところ15mol%以下においてはSDCとスピネル相の複合体、それ以上においては第3相としてSmFeO_3相の生成が確認された。酸素透過特性のSmドープ量依存性においては、He雰囲気下ではSm添加量に比例して単調に透過特性は向上したが、CH_4改質下では15mol%を最高に、さらなるドープは酸素透過量を減少させた。この理由としては、例えば20mol%添加試料は多量の酸素空孔を生じ酸素分圧が比較的高い領域では高い透過特性を示すが、CH_4改質下のような10^<-20>atmの低酸素分圧領域では還元により生成する空孔が増加し欠陥の会合等が進行するためと定性的には理解される。以上より、現段階で最も良好な複合体型酸素透過性セラミックスは15SDC-15vol%MnFe_2O_4であると言える。
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