水素燃料供給源(水素電極)に水素吸蔵合金、電解質に水素イオンだけが電気伝導に関与するプロトン導電性酸化物セラミックスを利用した小型化可能な高効率・高出力の水素酸素燃料電池の開発が進められている。水素吸蔵合金からプロトン導電性酸化物への水素イオンの輸率や移動速度などの情報は、小型水素酸素燃料電池の開発において極めて重要なデータである。 はじめに水素吸蔵合金であるジルコニウムあるいはチタンを水素電極とした小型水素酸素燃料電池を作製した。固体酸化物電解質には、寸法8.0φ×1.0t mm^3のSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>、SrZr_<0.9>Yb_<0.1>O_<3-δ>、CaZr_<0.9>In_<0.1>O_<3-δ>、BaCe_<0.9>Y_<0.1>O_<3-δ>のプロトン電導性酸化物セラミックスを用いた。複合イオンビーム成膜装置を用いて直径7.0mm、厚さ1.0μmの水素電極がそれぞれのセラミックス両面に蒸着された。次に、作製した水素酸素燃料電池を赤外線ヒーターにより加熱しながら電圧を印加でき、さらに電極内に捕獲された水素濃度を反跳粒子検出法(ERD:Elastic Recoil Detection)法により測定することが可能な試料ホルダーを作製した。作製した試料の中から水素電極にジルコニウム、電解質にSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>を使用した燃料電池を取り上げ、室温から533Kまでの10分間の等時加熱によるSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>からジルコニウムへの水素移動をERD法を用いて調べた。393Kにおいて水素がSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>からジルコニウムへ拡散し始めることが判明された。さらに電極内の水素濃度は493Kまでの温度上昇と共に増加するが、533Kではジルコニウム中に捕獲されていた水素は全て真空中へ放出されることがわかった。また、同時にラザフォード後方散乱(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)法を用いて元素分析を行ったところ、SrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>中の酸素原子が水素移動に伴いジルコニウム中へ拡散し、ジルコニウム酸化物を形成していることがわかった。来年度は電圧を印加し、電気伝導度の温度依存性を調べ、電気伝導度におけるプロトン伝導の寄与について考察すると共に水素移動速度を決定する。
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