研究概要 |
ジーベルト水素吸収装置を用いて、寸法10φ×1.0tmm^3、面心立方晶(δ相)のTiH_x, TiD_x(x=1.95)および面心正方晶(ε相)のZrH_x, ZrD_x(x=1.99)試料を水素ガス圧力と温度を調節することにより作製した。水素化物試料表面には約10nmの酸化物(TiO,TiO_2,ZrO,ZrO_2)層が形成されていることが同軸形直衝突イオン散乱分光(CAICISS)法およびXPSを用いて確認された。室温から573Kまでの範囲において等温加熱実験を行い、各加熱時間に対して試料中に捕捉された水素同位体濃度を2.8MeV He^<2+>イオンビームを用いた反跳粒子検出(ERD)法により測定した。TiH_x, TiD_xおよびZrH_x, ZrD_x試料表面の水素同位体濃度はそれぞれ473Kおよび523Kで減少し、表面から50nm付近の濃度は300nm付近よりも低いことがわかった。この濃度勾配はバルク中から表面への水素移動を表す。また、50nm付近の水素同位体濃度は加熱時間に対して指数関数的に減少した。これは、水素移動はトラップサイトからの水素同位体の熱脱離が律速であること示す。加熱時間に対する水素同位体濃度変化から各温度に対する熱脱離定数を求めた。TiH_x(ZrH_x)の熱脱離定数は、TiD_x(ZrD_x)の熱脱離定数より高い値を示した。この同位体効果は水素同位体の固有振動および振幅に大きく寄与すると考えられる。さらに加熱温度の逆数を関数とした熱脱離定数のアレニウスプロットを取ることにより、TiH_x(TiD_x)およびZrH_x(ZrD_x)の熱脱離定数の活性化エネルギーはそれぞれ1.3±0.2eVおよび1.8±0.2eVと決定された。これらの活性化エネルギーは熱拡散率から求めた活性化エネルギーより約2〜3倍高いことから、試料最表面に形成された酸化物層-水素化物間の界面ポテンシャルを表すと考えられる。
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