研究概要 |
近年、固体高分子形燃料電池は、分散型電源としての小型発電器として最適で、コジェネレーションにより約80%近い高効率発電が行えるため、環境にやさしい新しいエネルギー源として注目されている。家庭用燃料電池は、既存のインフラを考慮すると供給する燃料は、都市ガスおよびLPガスなどの炭化水素ガスになると考えられている。しかし、燃料電池へ供給する水素は、高純度なものが要求されること、改質時に650℃以上の高温を要するため、熱およびCO_2を発生する。そこで、水素吸蔵合金の分離,精製機能を利用し、様々な改質装置がいらない炭化水素ガスからの水素の直接改質を考えた。しかし、炭化水素ガスの中で安定なCH_4 10気圧の分解をGibbsの自由エネルギーから考えると、250℃で得られる水素圧は約0.01MPaと低く、プラトー圧の低い純マグネシウムでさえ、多量の水素を吸蔵できない。また、マグネシウムはプロチウム吸・脱蔵速度が遅いことを欠点として持つ。以上のことを解決する方法として、マグネシウムにカーボンナノファイバー(以下CNFと略す)の添加を考えた。これは、炭化水素ガス分解の触媒としての炭素およびプロチウム拡散速度の速い界面の増加による吸・脱蔵速度の改善を行う狙いがある。本研究は、炭化水素ガスの直接改質を行う水素吸蔵合金の前段階の試験として、水素雰囲気におけるプロチウム吸・脱蔵特性を調べた。その結果、Mg-22.3mass%CNF複合材は、ミリング時間の増加と共に粉末は均一かつ微細化し、その組織中からはCNFはあまり確認できない。これは、ミリングによりCNFが粉砕されたことを示唆する。活性化前の昇温試験において、8hミリングした試料は、室温から300℃までに約4.3mass%の吸蔵量を示し、8hミリングした純マグネシウムの0.45mass%を大きく上回った。これは、CNFとMg相との界面がプロチウムの拡散を促進させ、吸蔵速度が向上することを示唆する。250℃で最大までプロチウムを吸蔵させた試料は、373℃までに吸蔵量の85%を放出可能であることを明らかにした。
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